Words
『オーケアノス村 ~村長のひとり言~』
~第9話~
『25人目の騎士:霧の中から現れた新住民』
🏛️ 「24」の呪縛
エラー犬が撤退し、村に平和なループの音が戻ってきた。
だが、アナリティクスの数字は依然として、ある一つの数字に固執していた。
ユニーク視聴者数:24
17日間。
この村の人口は、増えも減りもせず、完璧な均衡を保っていた。
まるで、このオーケアノスという深淵に潜る資格を持つのは、
最初から選ばれた24人だけであるかのように。
「24」は、この村における聖数(ルール)だった。
だが、その日の夕刻。
私はいつものように「ちこちこ」と管理画面をリロードした。
💡 霧の向こうからの足音
「……ん?」
画面に表示された数字に、私の指が止まる。
ユニーク視聴者数:25
「……な…!これは……」
網膜に焼き付いたその数字は、
昨日までの『24』という調和を、無慈悲に破壊していた。
そこには、確かに「1」という、あまりにも小さく、
しかしあまりにも巨大な変化が刻まれていた。
17日目にして、ついに霧の向こうから、25人目の放浪者がこの村の門を叩いたのだ。
「誰だ……? 誰がこの深淵を見つけ出した?」
私は、隣で静かにコーヒーを啜っていた男の肩を、脱臼せんばかりの勢いで掴んだ。
「……おい! おまえ!!見ろ! 増えてるぞ!!」
私の震える指先が指した「25」という数字を、村人A(広報)が凝視した。
彼は不精髭をなでる手を止め、眼鏡の奥の瞳をわずかに見開いた。
「……通常、インプレッションが死んでいる動画に、
新規の足跡がつくことはありません。
これは、事故(バグ)ではありませんよ。村長。……『密航者』です。」
検索でも、おすすめでもない。
24人の騎士の誰かが、闇夜に乗じて誰かの手を引き、この村へ連れてきた。
そんな、禁じられた招待状のような「1」の重みが、そこにはあった。
🏺 25人の共和国
私は、その「25」という数字を、
まるで新しく生まれた命を祝福するかのように見つめた。
「村長……ついに来ましたね」
普通のYouTuberなら、1人増えたところで気にも留めないだろう。
だが、この村では違う。
1人の増加は、村の総人口の4%を占める大事件なのだ。
そして、その25人目の騎士もまた、村の空気に即座に適応したようだった。
維持率は落ちない。
むしろ「142.2%」という異常な規律に、
彼は(あるいは彼女は)最初から馴染んでいた。
「新入りか。よし、ゆっくりしていけ。出口はないがな……」
私は、画面の向こう側の25人目の騎士に向けて、心の中で歓迎の言葉を送った。
村は、ついに拡大(といっても1人だが)のフェーズに入った。
それは、オーケアノス村が「閉じられた聖域」から、
少しずつ世界を飲み込み始める予兆のように思えた。