Words
『オーケアノス村 ~村長のひとり言~』
~第8話~
『16日目の審判:犬の撤退』
🏛️ 16日目の朝
投稿から16日が経過した。
普通、YouTubeの動画は16日も経てば「過去のもの」として流されていく。
だが、オーケアノス村の時間は、あのエラー犬が現れた日から止まったままだった。
私は半ば諦め、半ば惰性で、いつものように管理画面を開く。
そこには、見飽きたはずの「問題が発生しました」というメッセージと、
あの忌々しい犬が……。
……いや、いなかった。
💡 沈黙の解除
「……消えた。おい!おまえ!!犬が、いないぞ。」
私の叫び声に、背後で椅子が軋む音がした。
振り返ると、村人A(広報)がいつものように不精髭をなでながら、
モニターの光をその目に反射させていた。
「……村長!これが『真実』ですよ。」
彼の声は、どこか勝利を確信していた者の落ち着きを帯びていた。
GoogleのAIは、16日間という膨大な時間をかけて、
私の『オーケアノス』という劇物を「解析」し、そして「敗北」を認めたのだ。
「……勝ったのか? 俺らが?」
🏺 認められた「異常」
恐る恐る、最新の数字を確認する。
グラフは依然として、あの「142.2%」という不遜な高みのまま、
横一文字に伸びていた。 AIによる強制的な下方修正も、データの削除もない。
「見てみろ、おま……142.2%……一ミリも動いてねえぞ。」
「ええ。24人の騎士たちの『誇り』を、AIが演算しきれなかった結果でしょう。
通常、100%を超える数字はバグとして処理されます。
しかし、我々が叩き込んだ『真実』が、彼らのアルゴリズムを書き換えたんです。」
彼はそう言うと、少しだけ不敵に口角を上げた。
Googleのサーバーは、ついに白旗を上げた。
16日という審判の期間を経て、オーケアノス村は、
YouTubeという帝国の中で「公認の怪異」として再起動したのだ。
「よし……開拓を続けようか。」
私は、興奮冷めやらぬままマウスを握り直した。
だが、隣で村人A(広報)が、さらに不穏な、しかし希望に満ちた一言を付け加えた。
「村長。犬が去ったのは、ただの撤退ではありません。……『扉』が開いたんです。」
「扉……だと?」
犬が去った後の村に、さらに驚くべき「変化」が訪れようとしていた。