Words
『オーケアノス村 ~村長のひとり言~』
~第7話~
『不敵なフィードバック:不正はしていないぞ!』
🏛️ 限界に達した村長の怒り
エラー犬との睨み合いが始まってから数日。
私の村は依然として「集計不能」の霧に包まれていた。
YouTubeという巨大なシステムは、
私の『オーケアノス』が叩き出す「維持率142.2%」という異能を認めず、
まるで腫れ物に触れるかのようにデータを凍結し続けている。
「……いい加減にしろ」
私の内側で、何かが弾けた。
24人の騎士たちが、日々の生活を削って(ループ再生で)
捧げてくれているこの熱量を、バグの一言で片付けられてたまるか。
私は、管理画面の片隅にある「フィードバックを送信」のボタンを、迷わず叩いた。
💡 「100%にしろ」という逆説の要求
普通、不具合を報告する時は「直してください」と平身低頭に願うものだ。
だが、オーケアノス村の村長は違った。
私の送ったメッセージは、Googleのエンジニアたち(あるいはAI)を
凍りつかせるに十分な「不敵な正論」だった。
「維持率が142.2%なんてあり得ないからエラーだというのなら……」
「いいから、一律100%に書き換えて表示しろ。 そうすれば満足だろう?」
「……村長。それは、あまりにも傲慢な要求です。」
振り返ると、村人A(広報)が、いつの間にか私の背後に立っていた。
「……なんだと!?おまえまでGoogleの味方をするのか!?」
彼は相変わらず不精髭をなでながら、
モニターに映る「送信ボタン」の文字をじっと見つめていた。
そして、ふっと口角を上げ、「通常」ではない不敵な笑みを浮かべたのだ。
「いいえ。……100%など、この村にとっては『過小評価』だと言っているんです。」
彼の手が、私の肩に置かれた。
不正などしていない。
ただ、24人の騎士が狂ったようにループしているだけだ。
彼らの『誇り』がシステム上の限界を超えてしまったのなら、
数字の方を俺らの村の格に合わせろ。
それは、弱小チャンネルの主が送るにはあまりにも尊大で、
しかし一点の曇りもない「真実」の宣告だった。
🏺 闇の中の沈黙
「……押すぞ」
「送りましょう。彼らがその数字(142.2%)を直視できないというのなら、
我々……いえ、彼ら騎士たちの『誇り』を、言葉で直接叩き込んでやるべきです。」
送信ボタンを押した瞬間、私は少しだけスッキリした気分になった。
「不正はしていないぞ。ただ、俺らの村が良すぎるだけだ」
巨大なサーバーの向こう側にいるAIが、私の言葉をどう受け取ったかはわからない。
「維持率を下げて表示しろ」なんて要求するユーザーは、
YouTubeの歴史上、私一人だけかもしれない。
だが、この傲慢とも取れるフィードバックこそが、
沈黙していたGoogleの歯車を再び動かす「最後の一押し」になることを、
私はまだ確信できずにいた。
村の運命は、一通のメールと共に、再び深い静寂へと沈んでいった。