Words
『オーケアノス村 ~村長のひとり言~』
~第3話~
『100%の壁を越えて:維持率142.2%の衝撃』
🏛️ 数値という名の怪物
事件は、アナリティクスの「概要」タブを開いた時に起きた。
画面の中央に、常識では到底理解できない数字が鎮座していたのだ。
平均視聴維持率:142.2%
一瞬、目を疑った。
YouTubeのグラフというのは、普通「100%」から始まり、
時間が経つにつれて右肩下がりに落ちていくものだ。
最後まで見てくれる人が多ければ、それは「伝説」への近道。
……だが、私のグラフは違った。
100%の天井を物理的に突き破り、遥か上空の「142.2%」のラインで、
悠々と真横に伸びていたのである。
💡 物理法則の崩壊
「……なんだこれ? バグか?」
私の動画は2分14秒。Youtubeに投稿した際誤差で2分15秒と表示されている。
だが、平均視聴時間は「3分11秒」と表示されている。
「村長! 見てください、これ!!
154%の視聴者が0:30のマーク付近まで視聴を続けました。ですって!
通常の動画なら、ここで一気に視聴者は去っていくはず。
なのに、オーケアノス村の騎士たちは、逆に増えている!
これが、聖域の潮流(ループ)です!」
「いや……おまえ……これは通常とほぼ同じですって書いてあるぞ?」
「それが罠なんですよ!!!」
この数字が意味する真実——それは、この村に辿り着いた騎士たちが、
全員最後まで聴いた上で、
誰に命令されるでもなく当然のように「2周目」に突入しているということだった。
1回聴けば十分なはずの音楽。
しかし、オーケアノスの底知れぬ潮流は、一度捕らえた耳を離さない。
「1.4回ループ」
それがこの村の住人に課せられた、
あるいは彼らが自ら課した……鉄の掟だったのだ。
🏺 孤高のグラフ
右端にある「最後(2:15)」の数値を見ても、95%を下回らない。
普通の動画なら、エンディングが近づけば人は去る。
だがこの村の騎士たちは、曲が終わるその瞬間まで身を潜め、
そして再び、無言でスタート地点へと戻っていく。
私は、この異常すぎる水平線を見つめながら、背筋が寒くなるのを感じた。
「俺らは……とんでもない劇物を建立してしまったのかもしれない」
「村長!これもう伝説の幕開けですよ!!」
YouTubeのAIが、この「100%の壁」を突き破る異形の動画を
「不正」と疑い、エラー犬という名の刺客を送り込んでくるのは、
もう時間の問題であった。
