Words
『オーケアノス村 ~村長のひとり言~』
~第4話~
『11年前の自分、背後に迫る』
🏛️ 聖域の比較
オーケアノス村の「142.2%」という異常な数字に毒され始めた頃、
私はふと、村の隣にある「古い神殿」を覗き込んでみた。
11年前に私が打ち立てた金字塔、
『Romancing SaGa 3 - Four Noble Devils』のギターアレンジ動画だ。
そこには、長年「伝説」として崇めてきた数字が並んでいた。
維持率:84.9%
かつての私は、
この数字を見て「なんて素晴らしい完走率なんだ」と誇りに思っていた。
100人中85人が最後まで残る。
それは音楽家にとって一つの到達点だと思っていた。
だが、今の私には……それが「普通」に見えてしまったのだ。
💡 麻痺する感覚
「あれ? 84%って……100%超えてないじゃん」
口から出た言葉に、自分自身が一番驚いた。
維持率が100%を切り、右肩下がりに落ちていくグラフ。
それは本来、YouTubeにおける「正解」の形だ。
しかし、オーケアノスの「天井突破グラフ」を
毎日「ちこちこ」と監視し続けた私の脳は、
いつの間にか「ループされない音楽は、何かが足りないのではないか?」
という狂った尺度に上書きされていた。
11年前の伝説が、まるで色褪せた古文書のように見える。
対して、最新作のオーケアノスは、
たった140回しか再生されていないくせに、
その密度だけで過去の自分を圧倒しようとしていた。
🏺 背後に迫る足音
部屋の隅で、モニターの青白い光に照らされた村人A(広報)が口を開いた。
「村長、3位になりました。」
「……だからなんだよ!」
アナリティクスのランキングで、オーケアノスが3位に浮上した。
1位のロマサガ3、2位のライブアライブ。
その背中を、この「24人の騎士しかいない小村」が、
維持率という暴力的なスコアで追い上げている。
かつての栄光を、今の自分が、見たこともない異形の武器を持って狩りにいく。
「過去の自分すら飲み込むつもりなのか……?」
私は、自分の生み出した『静寂の潮流』が、
過去の伝説たちをじわじわと侵食していく音を聴いたような気がした。
「……おまえも、そう思うだろ?」
振り返ると、いつの間にか居座ってる村人A(広報)は
相変わらず不精髭をなでながら、
過去の数字と現在の数字が交差するモニターを、ただ静かに見つめていた。
彼はそこに、「通常」という顔をして立っている。
村の経営は、いよいよ「過去vs現在」という、逃げ場のない内戦へと突入していた。