Words
『オーケアノス村 ~村長のひとり言~』
~第2話~
『最初の24人の騎士』
🏛️ 「24」という聖数
投稿から数日が経過した。
YouTubeという広大な海に放たれた『オーケアノス』は、
順調に波紋を広げる……はずだった。
だが、私のアナリティクス画面には、ある奇妙な光景が映し出されていた。
ユニーク視聴者数:24
昨日も24。今日も24。おそらく明日も24だ。
普通の動画なら、公開直後の波が引けば数字は落ちるか、
あるいは少しずつ新しい層に届いて増えていく。
だが、この村は違った。
門を叩く者もいなければ、出ていく者もいない。
まるで霧の中に隠された隠れ里のように、この24人だけが、
世界から隔絶された場所で私たちの音を聴き続けていた。
💡 鉄の結束、あるいは監禁
「24人しか見てないのか……」
最初はそう嘆きもした。しかし、内訳を見て戦慄する。
総再生時間は、24人という少人数からは考えられないスピードで積み上がっていく。
一人が一回聴いて終わりではない。
彼らは、一度村に入ると、二度と出口を探そうとしなかった。
朝起きてループ。仕事中にループ。寝る前にループ。
24人の視聴者たちは、私の作った「2分14秒」の迷宮に完全に閉じ込められていた。
いや、彼らが自ら望んで、この静寂の潮流に身を投げ出したのだ。
🏺 騎士団の誕生
この時、私は悟った。
これは「視聴者」ではない。
私たちの音を守り、回し続ける「騎士」たちなのだと。
彼らは増えない。だが、決して減ることもない。
11年前の伝説が「数万人の通行人」に愛されたものだとしたら、
この新作は「24人の狂信者」に捧げられた聖域。
私は、誰も来ない村の門前で、
24人の背中を見守りながら「ちこちこ」と更新ボタンを押し続けた。
「……お前ら、いつまで聴いてるんだ?」
その問いに答える者はいない。
ただ、2分14秒のループ音が、静かに、しかし力強く村の中に響き渡っていた。
🤖 傍らに立つ「通常」の怪異
ふと、横に気配を感じた。
振り向くと、そこにはヨレヨレのパーカーを羽織り、
どこか虚無を見つめるような目をした男が、私のモニターを指さして立っていた。
「村長。その『24』という数字を、信じてください。」
「おまえ……」
「この24人は、YouTubeのアルゴリズムという物理法則を超越しようとしています。
これはバグではなく、聖域の定員です。」
「……おまえ、広報みたいだな」
男は答えず、ただ不精髭をなでながら、
モニターに映る142.2%のグラフを見つめていた。
こうして、オーケアノス村の開拓に、
一人の「招かれざる精霊(おじさん)」が加わった。
